あかい工房
意見のぶつかり合い、sessionから始まる。
顔が見える職人集団『チームあかい』がつくる「場」の建築。
兵庫県神戸市北区に事務所を構える、あかい工房さんのご紹介です。
古民家を改築した事務所が素敵ですね。
ここは、私の生家でもあるんです。築150年以上です。
江戸時代末期に、赤井家の分家としてここに住み始めて、私で5代目になります。
初代が中古住宅として買ったのか、新しく建てたのか、古いものを移築したのか、今となっては分かりませんが、すごい住宅というわけではなく、ここらへんにある田舎の普通の農家住宅です。
古民家の改築も、仕事としてやることは多いです。
こちらは、上津台のすぐ近くですね。
ええ。同じ学区になります。移転こそしていますが、長尾小学校は私の母校です。
ここから小学校まで片道4Km。毎日歩いて通ったなあ。
私が10歳の頃、フラワータウン・ウッディタウンの開発が始まったんです。
ある日突然、裏山がなくなってる!
見に行くと、造成が始まっていて、森も林も何も無くなっていました。
悲しいとか驚いたとかではなく、単純に「何が起こってるんやろ?」という印象でした。
鮮明に覚えてますね。その頃から、行き場所を失った動物がよく出てくるようになりました。
ウサギとかタヌキとかね、車に轢かれてたり、すぐ近くで鳴き声が聞こえたり。今は開発も終わろうとしてるから、だいぶ減りましたけど。
都会の人が田舎に憧れて来られますけど、里山にはムカデなんかの虫が多いし、蛇も、マムシなんかよく出ます。その辺りもひっくるめて里山の魅力として感じる方に住んでほしいですね。
この辺りは冬は寒いですよ。盆地なので、放射冷却の影響で朝晩冷えます。
日中は少し温度も上がって暖かくなりますけどね。
上津台は少し高くなってるから、里山側が一面雲海になる時もあります。それは美しいですよ。
今回は、「近い」というのは大きなアピールポイントですね。
このあたりの気候も知り尽くしています。
あかい工房さんは、どんな工務店ですか?
うちは、こだわりの注文住宅を中心に、様々な「面白い」と言ってもらえる物件を手がけさせていただいています。
それは古民家の改築もそうですし、新築工事並みの大規模なリフォームを担当したり、西宮神社の倉庫・職舎を建てる仕事もさせてもらいました。
ここが一般的な工務店と違うところかも知れませんが、「一年に何棟建ててます」という形では仕事量を表現できません。
弊社の特徴としては、一人一人の職人の顔が見えること。
そして、担当者が変わらないこと。
それはつまり、私と一生お付き合いしないといけないということ(笑)。
うちは『チームあかい』という、建築への想いをともにした少数精鋭のチームで家を建てています。
そして、メンバーもほぼ変わることがありません。
工賃が安いからこっちの職人を使う、というようなことはやりません。
大切にしているのは、いかに建築の価値を高め合えるかです。
私が現場に回りきれないぶんを、職人が先回りしてきちっとフォローしてくれます。
建築の価値をどうやったら引き出せるか、私が言わなくてもチームで取り組みます。
そんなメンバーが、webサイトに「チームあかい」として載っています。ぜひご覧ください。
もう一つ大切にしているのは『session(セッション)』です。
住まい手、職人、業者や設計者、材料屋までもがお互いの今回の建築に対する想いを語り合い、呼応する。
そのsessionを通じて、それぞれの良さが融合し、唯一無二の「場」の建築ができあがります。
工業的にできあがる快適性を数値で表す家より、職人の経験とその家づくりにかける想いの詰まった建築を。
メンバー自身が建築を楽しみ、数値では表しづらいけど、「なぜかゆったり長居してしまう」有機的な家づくりを目指しています。
ヴァンガードハウスに負けない設計力!
きれいに敷地内に収まる美しさ。
今回の建物についておしえてください。
今回、里山住宅博のコンセプトを聞いて、うちが建てている家に当てはまるなと感じました。
外構コードについても、もっとこなれてくるとさらに良いものになるでしょうね。
電線を埋めて電柱をなくしたり、そこまでやりたいですね。
神戸北区地域周辺でも、町並みを壊しているフランチャイズの量販店や飲食店は残念でなりません。
いつもならお客様がいらっしゃっての建築なのですが、今回はモデルハウスなので、自分が住むならこういう家に、という視点も取り入れています。
今回の設計は、チームの建築家にお願いしました。
押さえるとこをしっかりと押さえることができる、設計の上手な方で、私は彼の設計が好きです。
個人的には、今回ヴァンガードハウスを設計した堀部、松澤両氏に負けていない、「場」として機能する設計だと思っています。
建築には予算がつきまといます。
当然塗り壁はいいですが、内装はどこまでも塗り壁である必要はないと考えます。
クロスを使うところはクロスでいい。
今回は和紙を使う予定ですが、そう言った割り切りと見せ場のメリハリをしっかりと効かせています。
また、モデルハウスにありがちな「現実離れした提案」もありません。
こんなのもできます、あんなのもできます、これどうですか、あれどうですかと要素を盛り込みすぎた非現実的なモデルハウスが多い中、今回の建築は「生活に本当に必要な機能」が、きれいにコンパクトに収まっているなと感じます。
玄関を入っての下足スペース。土間で繋がる外部のサービスヤード。
オープンキッチン。家事室から庭へ抜ける目線。ロフト……。
お客様が「欲しいな」と思う部分、営業マンが「これがあると売りやすいんだ」という情報をしっかりと把握しています。
その情報とこだわりとが結びつけば、必ず良いものになります。
一緒に仕事をする職人さんをご紹介ください。
チームあかいの職人は、言わなくても気づいてくれる。
「そう言うんじゃないかと思って、あらかじめ仕込んでおきましたよ、安心してください」なんてね。
みんな、我れ先にという姿勢ではなく、チームワークで動くことも大切です。
大工が先に板を張っちゃったら配管が隠れちゃうなとか、自分の仕事をいち早く終わらせることばかり考えていると、最終的に良い仕事にはなりません。
実質現場を任せている棟梁は、私の弟です。もう42年のつきあいになりますね。
うちは父が大工でした。当時はてきざみしかない時代でしたから、影響は受けたんだと思います。
大学を出て、親方のところへ弟子入り。5年ほど修行をして戻ってきました。
今は、その時の親方もチームあかいのメンバーとして活躍してくれています。
てきざみの技術の継承は大きな課題です。工務店が率先してやっていきたいと考えています。
ご来場者にメッセージをお願いします。
家づくりというのは、お客様のこだわりをどれだけ聞けるか、ということです。
今回の建物には、減圧式で乾燥させた高知の木を使いますが、うちはいつも同じ材料を使うわけではありません。
「こういうものを使います」という決まりきった提案ではなく、お客様と「こういう暮らしがしたい」という意見のsessionをしたいと思っています。
ファッション、お乗りの車、靴、時計などを拝見すると、針葉樹じゃなく広葉樹だよなぁ……なんて、話しながら伝わってきます。
構造材を見せたい。どういう見せ方をするのか。では、ここの産地の材がいい。
お客様と住宅との間を取り持つコーディネーターだと言っても良いかもしれません。
sessionの中で、お客様にとってベストな選択ができることが、一番の喜びです。
里山住宅博で、あかい工房はこんな家を建てたいんだということをお伝えしたい。
そして、興味を持っていただいたお客様の選択肢の一つとなれれば、これほど嬉しいことはありません。
代表 赤井 一隆 さん
にお話を伺いました。
古民家を改装した事務所で、柱時計の刻む時が印象的な取材となりました。
粋な赤井社長が里山モデルにかけるさらりとしたこだわりに注目です。
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会社名
有限会社あかい工房
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所在地
〒651-1512
兵庫県神戸市北区長尾町上津4217
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電話
078-986-5348
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FAX
078-986-7098
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E-mail
info@akaikoubou.com
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ウェブサイト
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代表取締役
赤井 一隆
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沿革
1969年 赤井重一が「赤井建築店」を創業 1999年 かやぶき事務所が神戸市指定有形文化財に登録 2004年 赤井一隆が「有限会社あかい工房」に組織変更 建築は人がつくる。少数精鋭のチームあかいが生み出す「場」の建築。