大市住宅産業
お客様と積み上げてゆく「時」を尊ぶ工務店が、
無垢材の魅力、暮らしの提案を現代町家で極める。
兵庫県篠山市に事務所を構える、大市住宅産業さんのご紹介です。
素敵な木の家が事務所なのですね。
こちらは常設のモデルハウスですが、事務所も兼ねています。
日々、木と暮らす家づくりをテーマに、『日々木(ひびき)』という名で、2005年に篠山にオープンしました。
10年以上たった今でも、はじめて来場される方には、木の香りとあたたかみが心地いいと言っていただけます。
新建材で造った家は、完成した時が一番きれいですが、無垢の木は年月を経て味わいを増します。その経年変化を肌で感じてもらえる常設展示場です。
里山住宅博参加の経緯をおしえてください。
最初、案内パンフレットが一枚送られてきました。
なぜ当社に届いたのかも分からないし、若干、半信半疑だったのですが、味のあるイラストに何か惹かれるものがあり、説明会に行き、「工務店で新しい里山をつくる」という話を聞いた時、いつも本当の里山で仕事をしている田舎の工務店として、これは参加しないといけない! と即決しました。
新しい取り組みへの分岐点にしたいと思い、良い機会なので建築家への依頼を考え、「現代町家」を数多く手がける趙海光さんにお願いすることになりました。
「現代町家」は、設計システムが明快で、独自の構造・工法があり、今後の当社の展開に盛り込んでいけると考えています。
単に、建て主から聞き取りをして、要望通りに図面を引いてしまうと、ややもすると、地域に不釣り合いで、20年・30年という長い目で見たときに陳腐なものになってしまいかねません。
建て主の夢をかなえることは第一義ですが、もう一歩踏み込んで、こういう形もありますよ、と選択の幅を広げた中で暮らし方を提案したい。
「里山」プラス「現代町家」はまさにそれにふさわしい住まいの形だと考えています。
里山住宅博のモデルハウスを訪れて、「日々の暮らしにおける豊かさとは何か」を考えるきっかけにしていただきたいですね。
大市住宅産業さんの特徴は?
母方の祖父は大工でした。
父母の結婚を機に、祖父:市野、父:大前の頭文字から「大市」住宅産業としたのが、私が生まれた翌年です。
以来、地元密着で木造住宅の設計施工をしてきました。
私は大学の建築学科を出て設計事務所に勤務し、12年前に当社に入りました。
当時父は、公共工事にも力を注いでいました。それは、かつてのように地縁・血縁を中心とした住宅の仕事が徐々に少なくなってきた結果でもありました。
地元工務店で家を建ててもらいたい、その選択肢に再び上げていただきたいという思いで、入社後すぐ父に相談し、篠山展示場を開設しました。
肌に触れる所は、無垢の木、左官壁など自然のものを使いたい。
底冷えする篠山で、しっかりとした断熱施工を行い、かつ手の届くコストでそれを実現したいというのが、10年前から変わらないコンセプトです。
2010年、代表を譲り受けた同年、三田市天神に長期優良住宅の先導モデルとして建築したモデルハウスでは、地域材にこだわり、丹波、篠山の木材、地元の土を使った塗り壁、地場の特産品である丹波焼の手洗い鉢を設置しました。
今回は趙さんに依頼しましたが、普段は、自社設計が基本です。
私自身がお客様と向き合い設計をし、施工を行います。決して大きな会社ではありませんので、スタッフ全員でひとつひとつの家づくりに取り組んでいます。
広く周辺市町からもご依頼を頂いていますが、工務店の原点は、「地域密着の家守り」だと考えています。
ですから、車で1時間を施工範囲の目安としています。
祖父の代からのお客様も多く、30年前に建てた家のリフォームをご依頼いただくこともしばしば。
それこそが工務店としての一番の財産だと感じています。
4年前から、篠山市内の若手工務店で会を作り、大学生と連携したり、子どもを対象にワークショップを行ったりしています。
今回も兵庫、大阪の工務店さんと共に取り組めることを、とても楽しく感じています。
土間が導く暮らしのかたち
内と外をつなぐ「現代町家」の暮らしとは?
今回の建物についておしえてください。
現代町家のコンセプトは一貫しています。
それは内と外をつなぐ暮らし。
そのためのたくさんの暮らしの道具や場所(土間や軒下など)を備えているのが現代町家です。
今回の敷地は団地の中央部で里山に面していません。
そこで建物を敷地の真ん中に置いて周囲を植物で包み、家の周りが小さな里山になるように考えました。
家の周りにはグルリと外土間が回っています。
ここは周りの植物に水をあげたり手入れするための露地みたいな場所。
またこの外土間はそのまま家のなかにつながって内土間(玄関土間)になりますから、自転車も乳母車もそのまま持ち込めます。
一階は大きな板の間とそれを囲む土間。
二階は寝室と水回り。
田の字形のとてもシンプルな家ですけれど、それだけに逆に、部屋割りでできた家にはない自由な暮らしができるんですね。
一階の板の間には小さな和室があって、ここは「家のなかの家」みたいな感じの場所、つまりお茶の間です。
ワンルーム的な家にも隠れ家的な場所があったほうが落ち着きますもんね。
板の間に面する窓はみな障子入りでアルミサッシは見えません。
またサッシの外には木の雨戸がついているも大きな特徴です。
そうそう、この家には屋根に換気塔が立っているんですよ。
家の真ん中はどうしても暗くて、風通しも悪くなるものですが、それを避けるための工夫です。
夏は一階から入った空気が二階床のルーバーを抜けて、家の中心部を通って換気塔に抜けていくわけです。
外の仕上ですが、一階の外壁は板貼りで二階の外壁は漆喰です。
家のなかはスギの床に漆喰の壁が基本で、一階の天井にはスギの構造体があらわしのまま使われています。
一緒にお仕事をされている職人さんについておしえてください。
ほとんどが地元の職人さんです。
皆さん気のいい人ばかりで、いつも助けられています。
例えば、電気屋さんは、電気図に足りなかったスイッチを追加しておいたよ、とか。
大工さんは、このほうが納まりきれいちゃうか、とか。
ご来場者にメッセージをお願いします。
今どきの家は、すこしばかり自閉症気味ではないでしょうか。
外に向かって開く暮らしが失われたように思います。
現代町家には、土間や軒下、フルオープンで外につながる大きな窓など、今どきの家が失くした暮らしの場所がたくさんありますから、そこをぜひ体験し、楽しんでいただきたいと思います。
代表取締役社長 大前 裕樹 さん
株式会社ぷらん・にじゅういち
一級建築士 趙 海光 さん
にお話を伺いました。
地元への愛着と会社のあたたかい雰囲気の伝わってくる取材となりました。
展開性のある仕組みを持った里山モデルは、様々な提案ができると初挑戦。
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会社名
株式会社大市住宅産業
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所在地
〒669-2203
兵庫県篠山市吹新64-2
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フリーダイヤル
0120-692184
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電話
079-590-1233
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FAX
079-590-1235
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E-mail
sasayama@daiichijutaku.com
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ウェブサイト
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代表取締役
大前 裕樹
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沿革
1968年 多紀郡今田村(現篠山市今田町)にて市野建築創業 1976年 大市住宅産業に改称(80年株式化) 2005年 「日々木」篠山展示場 開設 2010年 大前裕樹が代表取締役就任 2010年 三田市天神モデル 開設 2015年 株式会社一葉建築設計事務所 設立 篠山を支える企業として、いいものをつくることにこだわる工務店。