ダイシンビルド
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田瀬さん、堀部さんとの仕事の魅力を語る清水さん
田瀬さん、堀部さんとの仕事の魅力を語る清水さん

緑の工事の魅力と苦労

今回、工務店として出展はされていませんが、緑の工事とヴァンガードハウス3号地の施工を担当したのが大阪府大東市のダイシンビルドさんです。
緑の工事というのは、外構工事を行ったということですか?

里山住宅博in神戸では、緑のディレクターとして造園家の田瀬理夫さんに計画から完成まで、旗を振っていただいています。
我々は、田瀬さんとお仕事をさせていただいた経験があったので、田瀬さんの設計に従って出展工務店全ての外構工事を行い、実際に街並みをつくる「緑の工事」を担当させていただきました。

田瀬理夫さんがつくる外構、街並みとはどういったものなのでしょうか。

根底にあるのは「自生種」ということだと思います。
そこに昔からあった植物を、あるべき形でそのまま地域に残す。
ただ、それを延々とやっている。

普通、キレイな花も植えたいなぁ、ハナミズキなんていいなぁ、なんて考えますよね。
でも、ハナミズキはアメリカ原産ですからね、絶対にやらない。
自生種という原理原則、それを貫き通します。
田瀬さんのお話を聴く機会も多いのですが、同じことを繰り返し説いていらっしゃいます。
頑固なことをサラッとおっしゃる。そして、それを決して曲げない。
だ・か・ら、すごいんです。

田瀬さんの計画では、小さい苗を植えるので、驚かれる方がいらっしゃいます。
最初は緑がない印象なんですよ。そこから、時とともに成長する植物を楽しむ。

私も最初、こんなちっちゃいの植えていくなんてキリがなくて面倒だし、混植にする意味もわかりませんでした。
田瀬さんに尋ねると、こうおっしゃいました。
「この庭で太陽の光がこう当たったら、こう葉っぱが伸びるでしょう。そうして、この庭にあった木に育つのです。」
「大きく育った木を買ってきて植えれば、それはどこかで育ったものなので、勝手な方向に葉や枝が伸びて、『その庭の木』にはならないのです。」
「その場所に合わないものは枯れてしまうでしょう」
小さい頃から愛情を持って育てるというのは、生き物も緑も共通なんですね。

今回も、会期が始まった頃には小さくて頼りない緑です。
完成形になると、駐車場の車を隠し、建物の一部を覆い、素晴らしい街並みになりますが、そこまでに3年はかかると思います。
育つ過程を楽しむ。目の前に見えているものだけにお金を払うのではなく、未来の姿を想像するという付加価値も含めて、住宅を購入してほしいですね。

出展工務店の26区画、それが統一された街並みになると壮観でしょうね。

家と家の境界は、ブロック塀ではなく生垣となっている
家と家の境界は、ブロック塀ではなく生垣となっている

「鳥の目」が必要ですね。鳥になって上空から見下ろした時にどう見えるのか。
田瀬さんの設計は、そう言った目線に立っていると思います。

どんなに素晴らしい庭でも、一棟だとやはり一棟だけで完結してしまう雰囲気があるんです。
私の自宅も田瀬さんに緑の設計をお願いして、素晴らしいものができあがったのですが、やはりうちだけで完結している印象なんです。

だけど今回は、全部がつながるようになっています。個人宅とは設計を変えられていると思います。
一棟だけだと、「ここが見せ場」というような場所があるように感じるのですが、今回はそれが感じられません。
街並みを限られた予算で実現しようという設計の意図が伝わってきました。

26区画もあると、ご苦労も多かったのでは?

いつもの仕事と違うことは最初から分かっていたので、個々の外構に目が向くのを諌め、「全体としてどうなのか」という視点に立つことを心がけました。
一棟の「個」の感覚ではなく、公共性のあるものをみんなでつくりあげるんだという感覚を大切に、利己ではなく利他の精神で挑もうと。

しかし、ふたを開けると……、いやもう、そりゃあ大変でしたよ。正直なところ、何度投げ出しそうになったことか……。
一棟だと、本当に楽だなぁと骨身にしみました。
工務店によって、外構に対する考え方や経験が予想以上に開いていて、図面を揃えるだけでも一苦労。高低差の測定を依頼しても、遅々として進まない。
そんな中、支えになったのが「街並み班」のメンバーでした。

今回、出展工務店は3グループに分かれ、それぞれ「現場班」「広報班」「街並み班」という部会として活動をしています。その「街並み班」ですね。

ええ、素晴らしい仲間に巡り合えました。
定例会とは別に頻繁に部会を開き、時には夜遅くまで語り合いました。
そして、目の前に立ちはだかっていた「外構工事の価格」という大きな壁に挑みました。

各区画は、広さも違えば、角地もあるし、里山に面したところ、三方を建物に囲まれた場所、いろいろです。
その状況で、一緒に街並みをつくろうと言っても、金額で揉めるのは明らかです。
「なんでうちはそんなに高いんだ!」
「もう少し安くできないか」
「外構費としては高すぎるんじゃないか」
田瀬さんの指揮のもと、素晴らしい街並みをつくるというコンセプトを共有していたのに、そう言った不協和音が響き始めていました。
これでは、里山住宅博の存在意義自体が揺らぎかねない。

区画毎に外構費が違っていては先へ進めないと思い、平均を取って3パターンの金額を設定しました。
外構工事が大きくなるところは金額A、平均的なところは金額B、少ないところは金額Cと言った具合です。
定例会で提示すると、これが紛糾しました。

もうあかん。こんなん解決できへんわ! とさじを投げそうになったのですが、なんとか踏みとどまり、最後の手段だと思っていた「全区画外構費用統一」に取り組みました。
街並み班のメンバー、理事の皆さんも説得にまわってくれて、なんとか全出展工務店の同意を得て、やっと緑の工事が動き始めました。

今から振り返っても、「一社が均一料金で引き受ける」という今の形以外では、延々と見積もりを繰り返すだけで、実現には至らなかったのではないかと思います。

ここまで苦労して始まった緑の工事です。出展者みんなの力で、素敵な街を実現します!
田瀬さんの街並みは本当に素晴らしいです。ぜひ大勢の人にご覧いただきたい。

自宅の庭も田瀬さんのデザイン

清水さんご自慢の、自邸の庭
清水さんご自慢の、水盤も備えた自邸の庭

清水代表は、元々緑がお好きなのですか?

そんなふうに見えますか?(笑)
見ての通り、元々植物にはあまり興味がありませんでした。
外構も、そんなに力を入れていませんでしたが、自宅の庭をやるなら田瀬さんにお願いしようと決めていました。
田瀬さんの手掛けられたものをたくさん見ていて、その素晴らしさはわかっていました。

しかし、いざ田瀬さんと一緒に庭づくりを始めてみると骨が折れました。

ご自宅の庭でも大変なのですか?

私も驚いたのですが、関西で在来種を集めるのが大変なんです。
元々そこらへんに生えていた植物が手に入らないんですよ、信じられますか?

まず、植木屋さんをあたりました。全国流通している種しか扱っていないところがほとんどでした。
「在来種を扱っているところなんて知りません。市場に九州産のがあるからそれにしとけば。安いで。地元産なんて、何言うてるのん?」
そんな状況です。

次に、外構屋さんを片っ端からあたりました。反応は植木屋さんと同じでした。
なんのヒントも得られず、心が折れかけていましたが、気を取り直して次は造園屋さんをあたりました。
ここで初めて情報を得ることができました。
さすがに造園屋さんぐらいになると、田瀬さんのこともご存知でした。

そこからがスタート。調べてみて驚いたのですが、大阪にはそういう植物を育てているところは全くないのです。
兵庫県にちょこっとあって、あとは滋賀と和歌山。岡山には割とたくさん業者がありました。
その地域にあった植物なので、瀬戸内海気候の四国までだったらなんとか許せるけど、日本海側は在来種が違うからダメですよと田瀬さんはおっしゃいます。
その田瀬さんからの情報で、最後の植物の種が手に入った時は涙が浮かびそうでした。

たいへんな苦労ですね。

時々、「外構費がなんでそんなにかかるんだ?」とおっしゃる方がいらっしゃいますが、こんな苦労を重ねて、その地域にあった素晴らしい庭を造ろうと努力しているのです。費用はかかるものなのだなと理解してもらえると嬉しいです。

そうして、清水さんの自邸の庭が完成した。

苦労したからということもあったのか、最初は興味ありませんでしたけど、だんだんと緑にも愛着が湧いてきました。
田瀬さんの庭は「育てる緑」ですから、皆さんそうなると思いますよ。

私の家は一棟単位の庭なので、手入れしないとお隣さんへ蔦がのびてしまいます。
だいたい一ヶ月に一度、成長の早い時期には二週間に一度は手入れしてるかな。
里山住宅では、お隣さんに蔦が伸びていくようなことを心配する必要もないし、緑いっぱいの素敵な街になるでしょうね。

三年経てば、今とは全く違う街になりますよ。里山住宅博の区画は、最初から「緑の雲」となる高木が5本あるし、境界も生垣、車も緑で隠す設計だから、自分たちが街を育てる感覚を大いに楽しめるんじゃないかな。
ここに暮らす人だけが発見できる、特別な宝物です。

堀部さんとの仕事、ヴァンガードハウスの施工

ヴァンガードハウス3号地の施工についても教えてください。

設計を担当された堀部安嗣さんには、凄まじいプロ意識を感じます。
普段はにこやかで気さくな印象なのですが、いざ現場に踏み込むと真剣そのもの、空気が張り詰めます。

スタッフの方も、図面をすべて頭の中に入れていて、質問に即答します。
「〜だったと思います」と言った曖昧な返答は許されません。
「ここはいくつ?」「そこは○○mmです」と言った、歯切れの良い会話が交わされます。

姿勢が違うから、これだけの良いものができるのだと納得してしまいます。
段取りも本当にしっかりしています。
未決定の部分があっても、施工がその部分に取り掛かる頃には、きちっと仕様が決まっていて、施工が止まることはありません。
才能はもちろん、そうした姿勢が建築学会賞につながるのだと思います。

ダイシンビルドさんは、普段はどんな家を造られるのですか。

一言で表すなら、「吉野の木を使った高断熱の家」。
断熱、気密には自信を持ってやっています。
でも、断熱や木に凝り固まるのではなく、居心地の良い空間に何よりこだわっています。
断熱性能だけを求めて、ビニルクロス貼りの壁に断熱性能だけに優れた大手メーカーのドアを取り付けて、「最高の家ですよ!」なんて言えません。

我々は家を建てる時、敷地を大切にします。
大阪や神戸の都市部では、南が10m抜けているような土地はまずありません。30cmなんてこともあります。
そのような場所に同じ住宅を建てて、心地よい家ができるでしょうか。

今回のヴァンガードハウスの敷地も、景観的には北側が抜けなければなりません。
北側に大きな開口部があると断熱が不利になるからと閉じることは当然しません。断熱とのバランスを取っていきます。

敷地からプランを引くのが今回は堀部さんです。「そこに建てる意味」をお互いに重要視しています。

巾木の納まりなどの細かいディテール、素材の組み合わせから生まれる空間。
設計図は建築家に任せることがあっても、施工図は必ず自分たちで書きます。
最近では、我々の特徴を理解して施工を依頼してくれる建築家もいます。
設計の「先生」と「現場」という関係ではなく、良い信頼関係を築くことができています。
こと断熱に関しては、「無垢材、真壁で断熱をやりたいんだけどどうだろう?」などと建築家から頼られることも増えてきています。

堀部さんとダイシンビルドさんのお仕事、楽しみです。

柔らかい人あたりの向こうにしっかりとした意思を感じます
柔らかい人あたりの向こうにしっかりとした意思を感じます
我々もプロの施工業者として、もっと施工にこだわらないといけません。
「設計者なんて、施工のことも考えずに好きなこと言うよなー」なんてぼやいていてはダメです。
設計者の頭の中にあるモノをどう引っ張り出すかが大切です。
きちんと引っ張り出して理解できれば、それやったらこうやった方がいいと思いますよ、と提案することもできる。
図面通りに造るのが施工ではありません。
もっと引き出して、設計者とキャッチボールをすべきです。

我々は野球に例えるならキャッチャーのような存在です。
田瀬さんや堀部さんが投げる球をキャッチャーとしていかにしっかりと受け取るか、という姿勢が基本となります。
聞かれたら答えるし、こうしたらいいんじゃないかという意見は言うけど、建築家・造園家の魅力を最大限引き出すのが工務店の仕事です。

「図の通りにやるので、中はこっちに任せてもらえませんか」と大工が提案します。
「図の通りになるんだったらいいですよ」と堀部さん。

「ここに見えないように釘を打つことはできるかな?」と堀部さん。
「ええ。できますよ」と大工。
「え? できるの? じゃあそれでやっといて。でも、どうやって打つの?」
「企業秘密です……」とニンマリする大工。

こういったキャッチボールを積み重ねて、ヴァンガードハウスが、緑の工事が、里山住宅博in神戸が、素晴らしいものになってきています。


代表取締役社長 清水 一人 さん
にお話を伺いました。

建物・趙海光氏設計、外構・田瀬理夫氏設計のご自宅にて、ゆったりとした時の流れを感じることができました。

  • 会社名

    有限会社ダイシンビルド

  • 所在地

    〒574-0003
    大阪府大東市明美の里町3-4

  • フリーダイヤル

    0120-707-775

  • 電話

    072-863-3777

  • FAX

    072-862-2950

  • E-mail

    info@daishinbuild.com

  • ウェブサイト

    http://www.daishinbuild.com

  • 代表取締役社長

    清水 一人

  • 沿革
    2004年 設立
    2012年 新住協 関西支部を結成
    2013年 新住協 関西支部 支部長就任

    緑の計画実現への立役者。

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