「言葉だけでない、本当の里山付住宅。 見て選んで、そこに暮らせます。」
本当の里山付住宅ってなんだろう。
それはきっと、里山だけでもいけない、庭だけでもいけない。まちとの接点を緑で造景し、つないでいくことからはじめよう。
そんな理念を実現すべく、指導的立場にいてくれたのは、緑の設計家の田瀬さんと林さん。後ろ姿は、仕事人としか例えようがない、えもいわれぬ静かでしかし熱いオーラに満ちていて。
それを統括して大地におとしこんだ廣瀬誉という男がいる。毎日のようにこの緑の街区つくりの現場に足を運び、雨の日は傘もささずにカッパを濡らし、照る日には汗で全身を濡らしていた。もはや、Mr.ナリフリカマワヌである。
おかげで、寝そべっても痛くないフサフサの芝生のテラスもできた。水盤を優雅に泳ぐカエルを感慨深げに見る、先生ふたりの姿が印象的である。
真っ黒に日焼けしたホマレは工務店ブログをリードして、荒削りだがしかし、アイレベルで、時に立て続けに、まちの変わりようを伝えつづけた。きっと、現場で今日おこったこと、今起きている変化を伝えずにはいられなかったんだろうと推測する。
これまで、工務店は広報が苦手だった。ものつくりは得意でも、伝えるのがヘタクソなのである。
ヘタクソでもいいから、伝えてよ。その方が想いが伝わるよ。そんなOBの住まい手さんたちに支えられ、後押しされて、木の家群をつくり里山を再生するプロセスを、里山住宅博と題して伝えることにした。僕らにしかできない仕事をしよう、をテーマに。
だから、三世代において住み継がれる、緑いっぱいの百年集落を、真剣につくりあげようとする私たちの実践の肝は、ホマレが率いた緑の街区形成の現場にあった。(15号地にて、林さんと緑の役割と方向性を確認する大塚/写真提供:廣瀬誉)
暑さのピークを迎える今、一旦の小休止を迎える緑の街区つくり。
今日も、各戸の担い手は、これを引き継ぎ、愛をもって緑を養生している。芝目を正し、小石を拾い、高木の鉢を守る。日が暮れる頃には皆が緑に水をやる。隣地境界となる生垣はなおさら、丁寧に。水をあげれないときは、誰かがかわりにそれをやる。
そんな風に、会期中の緑を皆で守る。秋になれば、成長の軌道にのるであろう苗木たちを枯らさないように。たとえば、垣根越しにお隣同士がちょっと世間話、そんな希望的観測もあるけれど、後は緑の成長に委ねよう。
住む人が笑えば、里山も笑う。
里山が笑えば、住む人も笑う。
そう、里山は木の家の同居人であり、
住む人は里山の居候である。
そしてこの夏、ホマレは人生最愛の伴侶を迎え入れたのだった。
里山も満面の笑顔で、ようやったなあと背中をたたいている。
めでたし、めでたし。