里山住宅博街区では、昨年植えられた木々がひとまわり成長し、石積みや板張りのなどの自然素材とともに、一段としっとりとした美しい「まち」が完成しつつあります。
郊外の分譲地の多くで見かけられる、ブロック塀やアルミフェンス、コンクリート擁壁、前面に停められたむき出しの車、タイル風のサイディングの張られた建物の外観…
私たち建築にかかわる者は誰も望んでいないにもかかわらず、諦観せざるを得なかった経済性優先と公共への無関心から出来上がる乾いた「まち」…
そのような状況に風穴を開けることは、今回のプロジェクトの大きな目的の一つでありました。
設計にあたりいつも感じることは、どんなに頑張っても建物だけでは良くならないということです。自然を取り込むことで初めて居心地の良い空間となり、そのためにも豊かな外部環境をつくる必要がありました。
また、建物の外観としても、緑があり、自然があり、雑然としたものがさらけ出されていないからこそ、美しい佇まい、風景となるのです。
今回のプロジェクトで、造園家・田瀬理夫氏が手掛けたランドスケープと、周辺環境に配慮した設計ルールの下つくられた建築群の価値は、専門家の評価に比べ、一般的にはまだまだ認知されているとは言えません。今は高感度の人が注目しているこの価値感は、今後、緑の深まりとともに、徐々に受け入れられ、評価も一層高まるに違いありません。
「まち」は共有の資産となります。
このような「まち」を選択される方も素敵な方ばかりで、そういった面からも、ますます価値の高い「まち」になるのではないでしょうか。
木内一德/d+bアーキテクチャー